ブラジル人の視線 1


オレがブラジルに住み始めたころの話なのだがー。そのころのオレの仕事はシンプルだった。暇な時間をもてあましていた。猫すらまだ飼っていなかった頃だ。退屈で死にそうだったオレは、時間つぶしにスーパーとかショッピングセンターに一人で頻繁に出入りしていた。

そして、その暇つぶしからアパートに戻ったあと、オレはいつも妙にいらだっていることに気が付いた。

小さなガラスの破片のようなものがオレの感情に突き刺さっている。感情がささくれ立っている。近所の八百屋や菓子屋に行った時にその苛立ちはない。スーパーとショッピングセンターにいったあとに90%の確率でササクレるのだ。

ボラれたりボロい商品をつかまされたというわけではない。このテーマでは、アジアで散々”実地トレーニング”を積んでいた。だから、少しくらい喰らってもどうということはない。元々この分野では、ブラジルなどアジアには遠く及ばない。アジアでは、一瞬も気が抜けないのだ

なにが苛立ちの原因なのかーオレはよくわからなかった。あまり深く考えることもなく何ヶ月か過ぎていったのだがー。

土曜日 例によって暇をもてあましていたオレは、カルフールというスーパーにいった。日本で大損こいて逃げていったあのフランス資本のスーパーだ。たいしたモノは置いてないが、図体がやたらにでかい。一周するだけでエクササイズだ。時間つぶしに丁度いい。

駐車場に車を置いて、オレは入り口にゆっくり歩いていった。

オレの進路上前方20Mくらいの位置、スーパーの入り口付近に30代とおぼしき男女がいるのが視野に入ってきた。ヤツらの進路は、オレの進路と完全にクロスしている。オレはヤツらを見ているが、ヤツらはオレを見ていない。オレはごく自然に歩くスピードを緩めた。ヤツらがオレにぶつかる一瞬前にオレの前をかすめ、斜め30度の角度で過ぎ去っていくようにオレの歩くスピードを再設定したのだった。

by フェリックス 2006年6月

 

 

 

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