ブラジルの"偉人"たち


オレがブラジルに住み始めてからずいぶんたつが、この間

‘歴史上のー 偉大なる人物たち‘

に何人も会ってきた。

いや彼らはまるで偉大ではない 、でもすくなくとも名前はトテツモなく‘偉大‘であったのは事実だ。ではオレの出会った‘偉大な人物達‘とのエピソードを紹介しよう。

1 ジュリアスシーザー (Julio Cesar)

ジュリアスシーザーはオレの仕事に関係していた、ゴイアニアの田舎の漁師で、オレが出会ったときシーザーは20台半ばくらいだった。とにかくこのジュリアスシーザーは大酒のみで昼間からヒックヒックしていて始末に終えない。夜になるとベロベロになって飲み屋でオンナのことでモメテイル。

あるときこの田舎町のバーで、オレはビールを飲んでいた。
そこに突然この町に住んでいるダチがパトカーでオレをさがしにきた。

「オイ、シーザーが酔っ払って、またトラ箱に入れられた、引き取りにいってやれ」

「またシーザーかーーーもうシーザーは勘弁してくれ」

ブツブツいいながらもオレは警察署のトラ箱にシーザーを引き取りに行った。
シーザーは真っ赤な顔してフトラ箱で寝ていた。
オレには、フォロロマーノに横たわるシーザーのように荘厳にみえた。
シーザーをトラ箱から引き取ったオレはヤツの茅屋に送るべくクルマを運転しながら
静かにでも力強く決意していた。

「おれはブルータスになってヤルー 絶対だッ」

その後彼とはキッパリと手を切り二度とあったことはない。

 

2.ユークリッド (Euclides)

この男‘ユークリッド‘にはアマゾンで出会った。
いわゆるナンデモ屋で、”釣りの御つきの者”もすれば”大工”もする。頼めばタバコも買ってきてくれる、アマゾンにもメチャクチャくわしい。
でも‘数学‘ができない、計算ができないのだ。
小さな仕事を頼んだり、遊びを御つきの者を頼んだりすると、最後の支払いのとき必ずもめる。

「オイ、ユークリッド、値段が違うじゃないか、多いゾー」

「でもでもオレは計算したんだ、間違いないんだぁ」

「オイ オマエは ‘ユークリッド‘ だろう、どうしてこんなに間違うんだー」

オレは足し算だけの支払い計算式を紙に書いてユークリッドに見せてやる。
掛け算はユークリッドの混乱を招くからダメだ。、割り算は絶対ダメだ。

さんざんその紙を眺めていたユークリッドはおもむろに宣言する。

「アレアレアレェー そうだな オマエの言うとおりだ」

やっと話がまとまりるのだが毎回のことなので、支払いのあとはオレはいつもグッタリしていた。しかしいまはもうイライラしない。何故ならあるときオレは厳粛な事実を発見したからだ。

「そうかアマゾンのユークリッドは ‘非ユークリッド‘ の世界に生きているんだ」



3.プラトン (Platon)

プラトンとオレが出会ったのはオレ住んでいる田舎町ゴイアニアだった。
ツイ最近のことだ。自動車のディーラーに勤めていたプラトンから、おれはクルマを買ったのだ。とにかくゴイアニアのプラトンは値段を下げてくれない。オレはブラジルでは珍しく全額キャッシュで払う条件を提示しているのだが 、プラトンはダメの一点張り。
プラトンとオレとの間には当然激しいやりとりがあった。

そこには

「理性」


「真実の愛」


「エロス」

もまるっきりない。

オレはしょうがなくプラトンの言い値できめたかわりに、いくつかのOPTIONをプラトンからタダでもぎ取った。帰りに会計で支払いを済ませていて 、そこのオトコと雑談になった。オレがプラトンについてブツブツいっていると会計に座っていた冴えないオトコがつぶやいた。

「プラトンはいいやつなんだがオンナが好きでねぇーーー」

ゴイアニアの ‘プラトン‘ はプラトニックラブなど200%眼中になさそうであった。

 

4.アマデウス (Amadeus)

アマデウスは我がゴイアス州の北、アマゾンのハズレにすんでいた。
ボロいホテルのフロントマンだった。
田舎のホテルでは経営のルールとか客アテンドのルールなどまったくないから自由が利く。一日中クルマを運転していてハラが減っているから 、オレはブラジル名物

”ライス、ミニサラダ付ステーキ”

をアマデウスに頼んだ。
ブラジルでは庶民が食っている牛丼みたいなもんだ。
アマデウスはもう帰宅しようとしていたが、少し考えたあとこういってくれた。

「わかりました、お持ちしましょう」

やがてこの‘ライス、ミニサラダ付ステーキ‘をアマデウスが部屋に運んできてくれた。

しかし、しかしだ、食事を絶対ないがしろにしないイジキタナイオレは重大な事実を発見してしまった。

絶対的にオレが好きなモノ

‘ご飯の上の目玉焼き‘

がアマデウスが持ってきた皿には載っていなかったのだ。
どんな田舎でも黙っていても ‘目玉焼き‘はついているのに。

オレは疲れきっている身体に鞭打ってアマデウスに頼み込んだ

「目玉焼きだ、目玉焼き。コレがないではないか」
「これが無いとオレは生きていけない」

おれのすがる様な視線を感じだアマデウスはにっこり笑って

「わかりました。もう料理人が帰ったので私が作りましょう」

やがてアマデウスは目玉焼きを持ってきて、ライスの上に
ペタッとのっけてくれた。
ありがとうアマデウス!

オレは美しい穏やかなピアノの旋律に包まれた幸せな気分で、その目玉焼きとライスをスプーンで混ぜつつセッセと口に運んでいた。

PS. オレは彼ら以外に ‘アルキメデス‘とも会ったことがあるー

   − ブラジルでは偉人にたくさん出会える。

オレももしかしたらナポレオンかもしれない −

 

by フェリックス 2008年11月

 

 

 

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