物価


ブラジルの物価の動き方は本当に不思議だ。この物価 ーつまりものの値段の動き方ー を日本と比べると全く違う、いや違いすぎるといっても過言ではないだろう。

この国の物価の動きをみていると、ブラジルのモノの考え方が ”わからない” ことがわかる。大方の外国人にとってブラジルの物価が一番安く感じられたのは2001年、2002年だ。大統領選を控え、労働党政権ができることに対する不安からブラジル通貨は大幅に売られ、1j=4ヘアル近くまで下げた。その後、新政権下でも大きな経済政策の変更はなく、経済のファンダメンタルズが安定し、そして大発展した。ブラジル通貨ヘアルは恐ろしい勢いで上昇、いまでは1j=1.9ヘアルとなった。実に数年で100%以上上昇した。日本のバブル経済の少し前に起きた、プラザ合意による歴史的な円の急上昇よりドラスティックだ。

さてドルで収入を得ていた外国人、エキスポーターは、このブラジルのスザマジイ通貨高で大打撃をうけ、彼らにとってはバラ色が一挙に灰色になったわけだが、これで面白いのはブラジルの物価の変動だ。自国通貨が急激に強くなったら、当然、外国製品の輸入コストは下がる。ブラジルの場合、数年で100%以上という異常な上昇をしたから、輸入品は安くなって当然だ。日本では間違いなく為替変動で輸入品の価格調整
が行われる。値段を下げてシェアをアップしようとか、国内製品と競争しようとか、色々の作戦を立て正確にコストを計算しなおし、販売戦略を立てる。輸入コストが下がると値段を下げ、量を拡大し、シェアアップと総利益の増大を計る。これはとてもオーソドックスな手法で、どこの国でも当たり前のように起こるとオレは思っていた。

そしてブラジルでは、オレの知っている限りそのようなことは何ひとつ起きていない。

オレがハッキリみているのはクルマの値段。ドルが4ヘアルだった数年前、「BMW325i」というBMを代表するモデルをオレはサンパウロに見に行った。オレの住んでいるゴイアニアは田舎だから、BMWの代理店などないのだ。ドルで収入を得ていたオレは、モロブラジル通貨安を享受していて、ひとつBMWでも買おうかと本気で考えていたフシがある。だから値段を覚えている。(モチロン買わなかった)

それは、2002年ー120、000ヘアル=約3万数千ドルだった。

クルマの安い日本よりさらに安かった。輸入税が高いのに、「日本と同くらいの値段でで安いな」と思ったのだ。発展途上国では考えられない安さだった。しかしスゴイのはそのアトだった。

この間、イマのBMWの値段を雑誌で見たオレは驚愕した。

値段は同じモデルで 220,000ヘアル=115,000ドル。

このクルマの値段、数年でレアルで100%の上昇、ドルで考えると300%以上の上昇だ。オレには ー理解を超えているー 繰り返すが、この間ヘアルは対ドルで100%以上 ”上昇” し、ドルベースでの輸入コストは理論的には ”半分になっている” はずなのだ。ユーロの対ドル上昇を考えても輸入コストは大幅に下がっている。

そのBMW、値段が ”上がるにつれて” 販売台数は大幅に上昇、いまでは、数年前一番安かった時に比べ、何倍も販売台数を伸ばしている。メルセデスも同じである。
他の商品でも、例えばワイン、チリ産、アメリカ産など当然輸入コストが下がって値段が安くなるはずのものでも、その値段は堂々 ”上昇” している!

つまり、ブラジルの物価は ”常に上昇する” のだ。

為替もインフレもデフレも貿易黒字も財政赤字もファンダメンタルズも、なにもかも全くカンケーなく ”常に上昇する” それがブラジルの物価のファクトだ。為替差益還元どころか為替差益”無”還元+ワルノリ値上げというスザマジイ世界だ。

今日もBMWやワインは飛ぶように売れているのに違いないー

オレは、

「財政出動で有効需要を刺激しインフレターゲットをどうのこうのーーー」

とか

「不良債権処理を優先し、金融システムを健全化、その後どうのこうのーーー」

とかの、ついの間まで日本で盛んに議論していた、そして八百屋のおじさんまでなんとなく知っていたマクロ経済、ミクロ経済的なごくまっとうな議論がはるか数万光年遠くに思えた。

MBAの取得者はあまねくマクロミクロ経済の原則と応用に加え「ブラジルの物価はゼッタイ上昇する」という命題について研究すべきだ。

蛇足ながら面白いサイトがある。それはスターアライアンスという世界の航空会社連合が発行している「世界一周チケット」の各国の発券価格の一覧表だ。発券国が違うだけで条件も距離もおなじ、。要は世界一周できるチケット。世界数十カ国で売られている同じチケットだ。先進国はもちろんアフリカ、南米、東南アジア、東ヨーロッパ、−−
どこでもうられている。このサイトでズラリとならんだ各国の発券価格をみていて、あることにオレは気がついた。ある国の発券価格だけが異常に高かった。

それはモチロン、ブラジルであった。

 

−−−− ブラジルの物価はいつでも上昇する、でも下降ゼッタイはない −−−−

 

by フェリックス 2007年8月

 

 

 

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