女中とエリート駐在員 2


さて、彼女がバスでSPに向かったその日、引っ込みがつかなくなったオレは、思案した挙句SPの彼の銀行に電話をいれた。丁寧な秘書が、直ぐ彼に取り次いでくれた。

「オレの秘書がSPに明日つくのだがー」

オレは、彼がこの話すら覚えていないだろうと思っていた。しかし、答えは意外なものだった。

「おうそうか、あのBLACK MAGIC WOMANだな、了解した、ホテルはどこだ?」

会話はごく短いものだった。

さて、2泊して彼女が無事ゴイアニアに戻ってきた。その間、彼女からオレに連絡はなくオレからも連絡はしなかった。その時、オレは忙しくて暇がなかったのだ。戻ってきた彼女は、ちょっと晴れやかな表情をしているように見えた。オレは彼女を呼び、SPでの任務が首尾よく終わったことを確認した。

「で、ほかに何かあったか?なにも問題なかったか?」

彼女は言うか言うまいか迷っている風情だったが、やがてポツリとオレにいったのだ。

「この間のアンタの友人のギンコーの人と会った」

「何?なんだと?」

「・・・・」

「何も問題ないといったではないか、なぜ彼と会ったのだ」

「ホテルに着いたら彼からのメッセージが置いてあった、電話しろとのー」

「で、それでどうしたー」

「電話をしたら彼が出た、やることがないなら遊びに来いと、そして車を回すと」

「で、どうしたっ」

「しばらくして黒い車がホテルに来た、運転手がいて後ろに座らされた」

「大きなビルに連れて行かれ、女の人が事務所を丁寧に見せてくれた」
「そしてアンタの友達のガラスの部屋でコーヒー飲んだ」

「それだけかっ」

「その後、アンタの友達とその部下のブラジル人と、また同じ車でレストランに連れていってもらった」
「そこは日本食のレストランですごく高級そうだった。残念ながら私は食べられなかった、日本食は食べたことがないのでーー」

「むぅぅぅーー」

「そしてまた車でホテルまで送ってくれた」

そして、彼女はバッグからなにやら取り出し、いきなりオレに差し出した。この瞬間をオレは今でもハッキリと覚えている。それは安物のクッキーだった。彼女が、オレのためにSPで、自分のなけなしの金をはたいて買ってくれた【オミヤゲ】だったのだ。

オレがブラジルに住み始めて、最初の三年間で一番驚いたのはこのことだった。ブラジルと日本の文化や習慣の違いとか、価値観がドウノコウノで驚いたことはない。とくに新鮮でもなく、どうということもなかった。

しかし、こういう日本人がいるのかSPには、エリート駐在員で ムムッーーー

これは驚きだった。

その後しばらくして、この彼がSPの前はNYに駐在していたこと、その時ブラジルに出張して、【フィオデンタル(Tバック)】と言われる極細のビキニを大量に買い込み、今はテロでなくなったWTCのオフィスでアメリカのオンナの子に配って、みなキャアキャアいって奪い合いになって、本人は大人気だったことなどを噂で聞いた。ほかの人が同じことをしても【セクハラ】で訴えられるだけだろうとのことであった。

ところでその秘書の彼女だが、いまスペインのコスタデルソルに出稼ぎに行っていて、海岸で観光客向けにマニュキュアをしているという。

今度日本に帰国するときにでも寄ってみるかー

by フェリックス 2006年6月

 

 

 

HOME