百合の花


今回、日本を訪問する目的のもう一つに仕事に関する会議があった。

場所が分かり辛いということもあり、ただでさえ久々の東京でまごつくわたしとしては、十二分に早めに出かけた。だいたい、超方向音痴のわたしは、初めて行く場所は必ずといっていいほど迷う。「なんで、こんなに簡単な場所を迷うんだろう」と後から不思議に思うくらい、必ず反対方向に向かってしまう習性があるわたしなのだ。

この日も、やっぱり迷ってしまった。目当てのビルディングはオフィス街ではなく住宅街の中にあり、大まかにネットの地図で場所を確認していたが、住居表示の番地は、「この辺りのはず!」なのに、どっからどうみてもビルは見当たらなかった。

これは、誰かこの辺の人に聞いたほうがいいなと思い、住宅街をさまよっていると、区内のギュウギュウ詰めの小さな家の猫の額と表現するのがぴったりな庭で夫婦仲良くプランターの花の手入れをしている人を発見。道の方で何か洗っている年配の旦那さんに尋ねることにした。

「すみません。○番地にあるビルを探してるんですが。。。」

そうすると、旦那さんは、

「あぁ、そういうことならウチのに聞いた方がいい。」

この瞬間、このオジサンは多分わたしと同じ「方向音痴仲間」だなと察知した(笑)

わたしがオバサンの方を見ると、さっそくオバサンは「何でも聞いて」というオーラをいっぱいに

「○○ビルでしょ」

と確信を持って聞いてきた。きっと、「○○ビル」は、分かりづらくてみんなが聞くんだなぁと思いながら、オバサンの道案内を聞くと、今まさに通り過ぎた道の奥だと方向音痴のわたしでもわかった。

ここから5分もあれば確実に到着するとわかったが、結構時間に余裕があったので、お話好きそうなおばさんに、さっきからいい香が気になっていた大輪の花をつけている百合を褒めた。

「すごくいい香がしますね〜。こんな大きな百合初めて見ました!」

すると、オバサンはとっても嬉しそうに、この百合の種類やいつ頃咲くのか、咲いた後どうやって次回に備えるかを説明してくれた。

以前、東京に住んでいたわたしだったら、こんな風に知らない人と世間話をするなんてことは考えられなかったが、年のせいか、ブラジル生活のせいか、以前よりも人と接するということに違和感を感じなくなっていた。というのも、ブラジル人は、本当に自然に知らない人に問いかけてきたりする。その代表がスーパーで買い物をしてる時の「これどうやって使うの?」とか「これ美味しいかしら」とかである。

オバサンとオジサンにお礼を言って、ビルに向かってテクテク歩きながら、住宅の群を眺めながら、「こんなに小さな家でもこの辺だと高いんだろうなぁ」と思いながら、通り過ぎる車もなかなか高級車が多いから、その思いを確信していると、この辺でも珍しい軽自動車が向こうからやってきた。「当然だが軽自動車に乗ってる人もいるんだなぁ」と思っていると、お目当てのビルが並木の陰に見えた。

その時、何気なく見ていた軽自動車の後部座席の窓がスルスルと開き

「あなた〜〜〜、あそこのビルよ〜〜〜」

とさっき立ち話をしたオバサンの顔が現れた。一瞬、何事かパニクったが、さっき話をしていた時、どう見ても彼らは今から出かける雰囲気はなかったから、きっとわたしがまた迷うのではないかと心配してわざわざ車で追っかけて来たようだった。

「分かりました〜〜〜、ありがとうございます〜〜〜」

と会釈して笑いをこらえながらビルに向かって進んだ。

ビルの全体が見える辺りに来て、仕事のメンバーにビルの写真を見せようとバッグからカメラを出そうと立ち止まってゴソゴソやっていると

「あなた〜〜〜、そこよ!そこよ!」

とオバサンの声。振り返ると、車を停めてわたしが確実にビルに行き着くのを見届けている模様。

「わたしってそこまで、マヌケに見えるのかな?」

と思いつつ、「これはわたしがビルに入るまでそこにいるんだな」と写真を撮るのを諦めビルに入っていったのだった。

それにしても、見事な百合とオバサンを写真に収めたいと思いつつ、いくらなんでも通りがかりの見知らぬ人なのに失礼だろうなぁと思ったが、こんなことなら写真を撮らせてもらえばよかったと残念に思うのだった。

オジサン、オバサン、本当に助かりました。どうもありがとうございました♪


こんな感じの花でした

by あっこちゃん 2007年8月

 

 

 

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