大学のスクーリング


実は、前年の秋から母校の女子大の通信教育を受けることになった。
仕事上、どうしても必要になったからだ。

遥か昔、この女子大に通っていた頃、大学に隣接した大学の寮に入っていたのだけれど、夏休みは通信教育のスクーリングを受けに来る人々のために荷物を全て出さないといけなかったので、何気に迷惑に思ったりもしたし、どうして昼の大学に通わずわざわざ通信教育なんかやっているのだろうかと不思議に思ったりもしていた。

そんな自分自身が通信を受け、夏のスクーリングを受けることになろうなんて、ホントに人生何が起こるかわからないものである。

わたしの頭の中は、完全なる文系だし、実際に文学部を卒業した。けれど、今回の通信は家政学部で、これは、うちの大学では理系を意味する。お気楽だった大学生時代にも「夜なべの被服、徹夜の住居」などと噂しながら、気の毒に思ったものだった。今回、既に大卒のわたしは、学部入学となり一般教養などは優遇されたのだが、パンフレットには

「文系の方が理系に学士入学される場合、2年で卒業できるとは思わないようにして下さい云々」

などと厳しいことがわざわざ書いてあったのが気になったけれど、勝手知ったるなんとかというように、少しなめて、初めての夏のスクーリングに挑んだのだった。
授業さえちゃんと受ければなんとかなると勝手に信じて。。。


生理学の授業

夏のスクーリングは、8月いっぱい、授業は午前か午後に3時間半ぶっ続けで途中で10分のトイレ休憩のみ。大学の講義は90分なのだが、90分というのが一般的に若者の集中力が続く最長時間と聞いたことがある。とはいえ、1週間、月曜〜土曜までの6日間、毎日3時間半で一つの科目が講義される。生徒も大変だが、教授たちも大変だ。しかも、ある一定の範囲を終了させないといけないから猛スピードで講義は進む。そして、最終日の土曜日の後半に試験がある。

まず、スクーリングの初日にどのような人たちが受講しているのかを見渡してみた。まさに10代から60代くらいまでさまざまな女性たちがいる。洋服やお化粧の感じから、会社員もいれば主婦やアルバイトと思える女の子まで多種多様の女、女、女。そして、みな当然ながら本気である。教授の話を聞きながら、素早くノートをとっている。わたしも久々の授業、久々のノートとシャーペンを使いながら、要点を記していくのに必死だった。

思えば、大学生の頃のわたしときたら、大学に入った瞬間に勉強ということとは縁遠くなり、社会勉強と称してさまざまなアルバイトに勤しむ毎日を送り、講義なんかほとんど聞いた覚えはない。ノートなんて全くと言っていいほど取らなかった。でも、わたしみたいな学生が主で、ノートをちゃんと取っている生徒の方が珍しかった。あれでよく、卒業できたものだと思う。教授たちも口を揃えて、「通信の生徒の方が熱心だ」といい、講義にも力が入っているように思われた。

ところで、わたしが専攻しているのは、家政学部食物学科で理系という分類になるのは、もともと栄養学というのが、ナイチンゲールにさかのぼって、医学から派生したからなのだそうだ。医学と切っても切れない内容も多いため、生理学などは、自分は看護師か医者でも目指しているのかという専門的な内容で、よくよく聞くと、生徒の中には、ホントに看護師や医者がいるらしかった。他にも、企業で働く研究員など。。。そういう人たちがいるくらいだから、恐らく女子大の通信はかな〜〜〜り本格的なのだろう。

甘ちゃんのわたしには、とてもとても的な内容なのだが、入学してしまったからにはなんとか卒業しなければ、わたしの将来にかかることなのだ(実は、そこまで重要でもないのだが)初日の授業を受けた時点で、やっぱり諦めようかとも思ったのだが、失礼だけれど、見渡せばわたしレベルの人もいないではないし、そういう人たちもがんばっているのを励みにがんばることを自分に誓ったのだった。

ちなみに、スクーリングは講義だけではなく実験もある。そして、「食物学実験T」という一番初歩的な実験をとってみた。気になったのは、「基礎化学T」の単位を取得している人でないと受講できないことだったのだが、同大学の卒業生のわたしは、どうやら?大学生の頃に一般教養でこの単位を取得していたらしく、授業は免除されていたのだ。「化学」なんてどこの世界のこと?という感じで生きていたわたし。水がH2Oで炭素がCくらいしか覚えてなかった。本当は、事前に勉強しとこうと思っていたのだけれど、いつもながら、バタバタと日本にやってきて、日本でもバタバタと雑用に追われ、いってしまえば単なるいい訳だけれど、勉強する時間なんてほとんどなかったのだった。そういう状態で向かえた実験は、「初歩的な実験」と書いてあったのに、「初歩的実験」をたったの3時間半の間にそんなにたくさんやらなくても〜〜〜という満タンな内容。

しかも、その日にした実験のレポートを次の日に提出しなければいけなかった。ただでさえ、意味のわからない反応に対する実験をして、それについてレポートを書くなんてとても文系のわたしにできる技ではなかった。「ヨウ素でんぷん反応が云々」「リパーゼが…」「ペプシンが…」と次から次に聞いたことはあっても「それ何?」的なことばっかりで、それでも今はインターネットでいろいろと簡単に調べることができるからまだしも、ネットのなかった時代だったらレポートなんてとてもとても書けたものではなかった。

レポート提出は月火水と3日間続き、毎日ほぼ徹夜状態。しかも欲張ってこの週は、午前午後と授業を取っていたから、もう一つの方も勉強しなければならない。救いだったのは、もう一つの講義がそこまで専門的ではなかったので、授業さえきちんと聞いていたら試験はなんとかなった。けれど、実験さえやればいいと思っていたこっちの試験ですっかり赤点をくらい、なんとか教授が救いの手を差し伸べてくれて、再試験&レポートで合格させてくれたのだが、最初の1週間ですっかりヘロヘロに疲れ果ててしまったのだった。

2週目3週目は、しっかりと復習しないと到底ついていけない内容で、ただただ、全てが終わる8月21日(土)が早く来ることを祈りつつ、毎日できる範囲でがんばった。

わたしが社会人になって覚えたもっとも大きな教訓に

「時間が解決する」

というのがある。誰に教わった訳ではないが、初めて入社した会社で管理職が管理できない人で新人のわたしには到底こなせない量の仕事がぞくぞくと入って来て、わたしのスケジュール表は、午前、午後、残業時間を配分しても到底時間が足りない状況だった。毎日帰れるのは終電時間と決まった生活が続いた。しかし、不思議なことに、当日を過ぎるとなんとかなっていたのだ。モチロン、ぼやっとしていては、仕事はこなせないのだが、自分でできるせい一杯さえ尽くせばなんとかクリアできた。だから、今回もそうやってこなしていくしかなかったのだが、実際、その日が来たらなんとかなった。果たして、実験の追試で教授が「合格にしてあげましょう」といった以外の授業でテストに受かっているかどうかは分からないが、なんとなくいけてる気がしている。

わたしの場合は、卒業することが目的だから、間違ってもいい成績を収めようなんて過分な望みはもっていない。ギリギリでいいから単位を取得できればそれでいいのだ。

とはいえ、10代の時と違って、長い人生いろんな経験を積み重ねて受ける講義は新鮮で、全ての内容は実生活に密着して頭に入って来るから、学生時代よりもうんと実を感じている。

あなたもどうですか?
わたしと一緒に通信を受けてみません?
新たな楽しみを見出せるかもしれませんよ。

by あっこちゃん 2010年9月

 

 

 

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