Honda NXR 125


高校の頃からバイクに乗りたくて仕方がなかった。私の通っていた高校は都立高校でとてもリベラルな雰囲気だったから、バイク通学が認められていた。だから500CCの大型バイクで通ってくる同級生もいたし、教習所に通っている友人も少なくなかった。僕は父親に、それとなくバイクの免許を取りたいと水を向けるのだが、

「単車は危ない」「不良の元」

の一言で片づけられ、取り付くしまもなかった。そのころ憧れのバイクは ホンダCB400Fとエルシノア125/250。駅の近くのバイク屋でカタログをもらい、部屋でながめながらため息をついていた。

社会人になって親の支配から逃れ、自分で免許をとったりバイクを買ったりする条件は整ったのだが、今度は時間がなかった。その上、暴走族の登場で、一挙に免許も取りにくくなっていって、限定解除という大排気量のバイクに乗るための免許は、制度としてはあっても実際にはだれもとれないくらいに難しくなってしまっていた。

そのうちバイクは僕の頭の中から消えていき、車の方に興味が移っていって、僕が 
”そうだバイクの免許を取ろう” と突然思い立った時には、バイクにあこがれた高校時代から気の遠くなるような歳月が流れていて、しかもブラジルの地方都市に住んでいた。そこで思い切って教習所に通い、試験を受けて、ついにバイクを手に入れた。
それがHONDA NXR125という中型のオフロードバイク。エルシノアも単気筒のオフロードバイクだったから、NXR125もその血統と言えなくもないかもしれない。でも、高校当時のバイクをカタログやショップで見るたびに感じた胸躍るような、わくわくするような気分にはなれなかった。単車は社会から白い目で見られ、友達からは憧れの目でみられる ”理由なき反抗”期 に乗るべきだったと思う。

だから、買って少しの間街を乗り回した程度で、それからずっと事務所のガレージに入れっぱなしだった。大平原地帯のゴイアニアで、4年間に3500KMしか乗っていないから、かなり少ない。挙句の果てにほとんど新車同様とみたブラジル人の友人に譲ってくれないかー などと言われる始末だった。

それを最近引っぱり出して、また乗るようになった。毎週土曜日と日曜日。平日は車も多いし、時間もないので乗る機会は少ないが、晴れた日の土日にちょっと郊外へ出てファゼンダと呼ばれる大牧場の小道に入ったり、町のはずれの小さな住宅街の裏道にはいったりしている。小さなBARがあると、そこにバイクを止めてパステルというスナックをつまんでコーヒーを飲んだりして時間をつぶす。125CCのオフロードバイクというのは、ゴイアニアで乗るのにはぴったりだとおもう。スピードはでないから広い道では車に抜かれるけれど、ちょっと奥に行くと舗装されていない道がたくさんあって、プレーンな草原の景色が広がっている。そこに乗り入れて、あちこち走りまわるのがとても気持ちいい。早朝と夕方は光がきれいだし涼しいから、バイクで走るには一番いい時間帯だ。でも最近、昼に走るのも楽しいことに気がついた。昼間のゴイアニアはとても暑いからみな昼寝をしていて、街もひっそりとしていて、キリコの絵のような雰囲気があるんだな。そこをバイクで走りぬける。

これからは、小型デジカメを携えてバイクに乗って、気に入った風景や人や動植物を撮ってみたいとー つまりゴイアニアの花鳥風月を撮りたいとひそかに考えている。

by フェリックス 2007年7月

 

 

 

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