年末の出来事


記事を書こう書こうと思いつつ、もう今年も半分近くになってしまいました。
わたしの記事を楽しみにしている僅かばかりの方々、ゴメリンコ(笑)

さて、年末年始とは、2009年の年末のことです。

ブラジル生活も今年で8年目に突入して、普通の日本人だったらアタフタ驚くようなことも日常茶飯事と関心をなくし、自分自身も日本に戻るとブラジル人化していることに恥ずかしく思う日々に、久しぶりにセンセーショナルな事件があったのでした。

2009年のクリスマスを目前にした週末。

日本では、勘違い経営ですっかり撤退してしまったフランス資本の巨大スーパーマーケット「カルフール」だが、ブラジルでは成功を納め、このゴイアニアでもウォルマートと並んで人気のスーパーとなっている。

クリスマス前のカルフールは、クリスマス準備の買い物のためにごった返していた。

わたしも、年末年始くらいは、ちょっとは変わったものが食べたいと思ってやって来たものの、結局あるのは、いつもと変わらぬ食材で、ただ通常よりもフルーツが充実しているくらいでがっかりしながら、それでも、日本の果物とは比べ物にならないくらいショボイ果物とパネトーネなんかをでっかいカートに載せていつもよりも時間のかかるレジに並んでいたのだった。

ブラジルの巨大スーパーのレジは、個数だけはいっちょ前にたくさんあるが、レジの女の子は、みな座ってバーコードを通すから、ダラダラと時間がかかる。わたしの前には、2名が並んでいたが、レジを通過中の客の品物になんか問題があって、それを確かめるのに異常な時間がかかっていた。

日本ではどうだったのか知らないが、このカルフールの従業員の中には、客の品物の値段が棚とレジで違う時に確認したりするローラースケートを履いたスタッフがいるが、ローラースケートを履いているからスイスイ確かめて来てくれる訳でもなく、ダラダラと行って戻って来るから、日本人のわたしは、イライラさせられるのだった。

そして、まさに、わたしの並んだ列のレジでその問題が発生していて、わたしはイライラとレジを睨みつけていた。

すると、わたしの前のおばさんが、今何時かわたしに聞いてきた。ブラジル生活ですっかり腕時計をすることをしなくなったわたしは、わからないというと、わたしの後ろのおじさんが、親切に時間を教えてくれた。

前のおばさんは、どうも落ち着きがなくキョロキョロしたり、独り言をいったりしていたが、変な人満載なこの国だから、あまり気にも留めなかった。

やっとレジの問題が解決して、わたしの前のおばさんの番になった。

わたしは、暇つぶしに、おばさんがいったい何を買っているのかカートの中をジロジロと観察していた。カートに入っていたのは、ビールの24本パックと2本のメーカーの違うビール、それと、ミニカーを走らせて遊ぶ子供のおもちゃだった。

クリスマスの前だから、他の人のカートは、大量の食料品で埋め尽くされているのに、「シンプルだな〜」と思いつつ、おばさんの服装や持ち物を見ると、あんまり裕福そうには見えないから、クリスマス前のボーナスで僅かばかりの買い物なのかといろんな想像を巡らせていた。

おばさんは、自分の番になってレジに2本のビールを置いて、レジの女の子がおもむろにビールをレジに通しはじめるとおもちゃのA2くらいの大きさのでっかい箱をレジの女の子にかざして何か聞き始めた。よくは、聞こえなかったが、どうやって遊ぶのかみたいなどうでもいい質問だ。ブラジル人は、よく、全くの他人にプレゼントの相談なんかするから、また始まったと思いながら、でもおばさんの動きから目が離せなかった。

なぜかというと、おばさんは、そのおもちゃの箱でレジの女の子の視界を遮って、まだ24本パックの入ったカートを少しずつ前に移動させ始めたからだ。

ギョッとしながらおばさんのやっていることを凝視するわたし。

おばさんは、ようやく女の子のおもちゃの説明に納得したかのように箱をレジの女の子に渡して、すばやくカートをレジの後方に移動させたかと思うと、すごいスピードでレジ袋を取って、レジを通していないカートに乗っかったままのパックのビールにレジ袋をかぶせた。

そして、犯罪者はよくしゃべるというが如くレジの女の子にどうでもいいことをペラペラ話しかけていたのだった。

目撃者のわたしは、おばさんの興奮がストレートに伝わって来て、わたしもいっしょにドキドキしながら、果たしてわたしの後ろに並んでいる人たちは見ていなかったのかと後方に目を向けたが、みんなレジには全く関心を持っておらず、後方に並ぶ4名くらいの人々全員が全く別の方向をおぼろげに眺めていた。

これが日本なら。。。と、わたしは想像した。

少しでも早くレジが進むように皆がみんな、レジの二人にプレッシャーを与えるがごとく見つめているはずだ。

しかし、このブラジルという国は、時間を尋ねる声には関心があっても、レジの他人に関心はなく、ただ、ぼんやりと並ぶだけだった。今でこそ、少しはましにレジは進むけれど、昔のブラジルなんか、レジの列は気が遠くなるくらい進まなかったから、みな、こういう無関心で時間をやりこめる術を身に付けた結果に違いなかった。

レジで勘定を済ませようとするおばさんにわたしは目を戻し、より深く観察をした。

おばさんは、中肉中背の50才くらいの白人だった。

服装は、きれいにアイロンはかかっていたが、結構着古したなんの飾り毛もない白いTシャツにスカート、そして、靴でもサンダルでもなく「シネロ」と呼ばれる日本でいうビーチサンダルをはいていた。持っている鞄も安物だったし、使い古していた。

このカルフールというスーパーは、日本でいうイトウヨーカ堂レベルの巨大スーパーでたいていのものは売っているし、そんなに高くもなかったが、一般的に「シネロ」しか持っていないような貧乏人は来ない。来るのは、車で買い物に行くレベルの人たちだ。

もしも、このおばさんが、肌の色の浅黒いブラジル人だったら、もしかしたら、バレていたかもしれないし、それ以前に、こんな大胆な万引きをしてなかったと思う。彼女は「白人」だからこそ、マークされ辛い。それを知っての行動なんだなとピンと来た。

わたしは、目撃したことを後悔した。自分の中の二つの良心が葛藤したからだ。

日本人の良心は、「犯罪者を見逃していいのか?」と問いかけてきたし、ブラジル人化してしまった良心は、「彼女は、貧しい家族のために危険を犯してまで家族の喜ぶ顔を見るためにビールを万引きしているんだ。見過ごしてやれ。」と諭した。

わたしは、ふと、もしもここにブラ男がいたら何と言っただろうかと想像した。

きっと、彼も「何もいうな」と一言だけいったに違いなかった。

わたしは、ドキドキをそのまま家に持ち帰って、さっそく見たままをブラ男に報告した。

すると、彼はやっぱり、「騒ぎたてなかった君は正解だ」とぽつりと一言いったのだった。

by  あっこちゃん 2010年4月

 

 

 

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