悲しみのセニョール、バウデマー その1


事務所を改装して、写真スタジオを始めることになりました。
この改装のために、サントアントニオ市の大工さんを探し、見積もりを取ったところ。。。。。

25畳くらいの事務室と従業員の寝泊りしていたスペース(台所・お風呂場など)12畳分を写真スタジオ、とサウナ付きお風呂場・トイレ、細い廊下と廊下の一部を書棚に改装、スタジオの前にベランダをつけるという改装計画です。

そして、新しく従業員の住む小さな家を計画。

頼んだ大工さんは、セニョール バウデマー。 この道30年のベテランで、なかなか評判のいい人と同じサントアントニオ市から来ている会社のお手伝いさんのお墨付きのある人です。

でてきた見積書は、 
両方ともそれぞれ工期1ヶ月で
改装部分 R$5,000.00(6月の為替レートで 約¥350,000)
新築の家 R$6,000.00 (同じく 約¥420,000)

もちろん、工賃だけです。  
材料は、別です。(建築主が、全部買います。)

日本人としては、信じられない値段です。
即、依頼することになりました。

さて、問題はこれからです。

日本で見積もりを出してもらうときには、殆どが大工さん(建築会社・設計士)任せですよね。

依頼主: 50坪の家を建てたいんだけど、場所は***で、予算は+++くらい。
      家の感じは、南欧風で赤い屋根に白い壁にしたいの。
      庭は大して取れないから、エントランスの辺りを流行のガーデニング風に
      アレンジしてもらえばいいわ。

大 工: そうですね。標準仕様で、坪70万円として、3,500万円はかかりますよ。
      お選びになるものによっては、別途、値段がかかります。

依頼主: そんなにかかりますか? もう少し安くならないかしら。

大 工: 少し坪数を減らすか、内装を安めのものにすれば、2,500万円くらいでも
      何とかなるかもしれませんが。。。。

などと言う会話に基づいて、設計図がひかれ、あちこち直してGOサインを出して、5〜8ヶ月くらいで出来上がると言うのが一般的でしょうか。

工期の短さは、依頼した家が20坪大の平屋なのでわかるとしても、お値段ですよね。
この値段なら、誰でも頼もうっていう気になりませんか?
材料費も日本に比べれば、安いものが多いのでそんなに気にならないで始められるのです。

私は、日本に帰る予定があったので、必要なものをリストアップして表を作り、主人に渡して工事の最初の部分は、何もしなかったのです。今にして思えば、何と気の楽な時間だったのでしょう。

日本についてすぐの頃は、主人から 「もう、壊し始めているんだ。結構、早いよ。」と、楽しそうな報告が、メールやSkypeから入ってきます。
それが、日を追うにつれ、「床を貼るのに、斜めにタイルを貼ってもらうつもりが、会社に行くのが遅れたので、縦に普通に貼ってしまった。やり直せっていったら、悲しそうな顔するから、嫌になっちゃう。」 それは、そうですよね。途中までとは言え、せっかく貼ったものをはがして貼りなおすのですから。その後も似たようなことが続き、確認してからすればいいのに、勝手に始めては主人の怒りを買い、その度にやり直しをする嵌めになるのです。

そのときの悲しそうな顔が、なんとも雰囲気があって、絵になる人です。(ご本人は、絵にならなくてもいいから、と思っていたでしょうね。)

さて、工事もあらかた終わっているはずと思いながら、8月の始めにブラジルに戻ってみると。。。。

まだまだ、道は長そうです。 床は貼ってあるものの、天井はまだ電気がつけられただけ。壁の塗りなおしも、ベランダへの出入りのためのガラス扉もまだ出来ていないし、第一、ガラスが入っていないのです。 後でわかったことですが、ガラスは、別途、ガラス屋に頼んで格子状の枠にはまるように12cm四方のものを切ってもらい、職人さんが入れに来るというシステムでした。


ガラスの入っていない窓と屋根が取り付けられた状態のスタジオ前のテラス

お風呂場も形こそできているものの、まだレンガを積んだ状態ですし、天井もはってないし、もちろん、シャワーもお風呂桶も洗面台もトイレもまだ何も出来ていません。

工期1ヶ月は、どこに行ったのかしらん。
まぁ、ブラジルだから、時間がかかるのは仕方ないとしても、果たして終わるのか。
秘書のマーラは、「あまり無理を言って、怒らせたら、途中でやめてしまうかもしれないし、そうなると次の人を探すのが大変だから。」と言ってくる始末。
その上、マーラの実家も建築中なのですが、「ママの頼んだ大工さんより、よっぽど良いし、安い。この間なんて、電線を3km分買えって言われて、驚いてもう一度、調べなおしてもらったら、1kmで足りると言われた。」と言う話をされました。
でもどんな巨大な邸宅でも、電線3kmはおろか1kmでも異常な長さだと思うのですが。。。。

それに比べたら、工期が少し遅いくらい、大した問題ではないと思えるのでした。
ただし、工期が延びると言うことは、工賃が増えると言うことですよね。いくら、こちらがやり直してもらったからといっても、過ぎてしまって何の結果もでていない分にお金を払いたくないのは人情です。きちんと聞いてから始めたところはともかく、勝手に取り付けてやり直したところは、バウデマーの責任ですから。
とにかく、9月に入っても工事は終わる気配がなく、相変わらず、バウデマーの思い込みで付けたものが、気に入らなかったり、もう少しきれいに取り付けてもらいたかったりの連続で、こちらもあちらも疲れきっていました。

ここで、ブラジルの建築について____
以前にもどこかで書いたような気がしますが、ブラジルでは、建築方法が大きく分けて2つあります。

@、建築会社に依頼する。これは日本と同じで、契約を結び、後は材料費が上がろうが、下がろうが、契約通りに履行するもの。材料の購入などは、建築会社がすべてやってくれます。金額は高いが、建築会社任せである程度は、進みます。

A、設計士や建築士を頼んでも、材料は建主が買うやり方。 
今は、日本でもこのやり方をする人もいるようですが、日本の場合は内装材や照明器具、タイルなどを自分で手配し、@より安く上げようと言うやり方ですね。決定的な違いは、ブラジルでは、内装・照明器具・タイル・台所などだけでなく、セメントからレンガ、配管材に至るまで全部建主が買うのです。

この場合も大工さんがリストを作ってくれれば、それに基づいて買えばいいのですが、まず、リストと言うものは、出て来ない。そればかりか、ある日突然、「これとこれがいる。」と言われるのです。
最たるものは、洗面台のボウルを買ったとき、「ハリーニャが必要だ。」と言われて、「ハリーニャって何????」と聞き返すと、ボウルの水が出て行くところと使った水を外に出す(下水管?)をつなぐ部分の金具ですって! どこだかわかりますか? 要するに、ボウルの真ん中に空いている栓をするところは、金具がはまっていたりしますよね。あの部分です。別売りということが、想像できないのです。
他にもドアを買えば、ドアノブを選ぶと言うのはまだわかるけれど、鍵からちょうつがい、それを取り付けるねじまで、別売りです。

日本の場合は、たとえば、下水システムへつながる管を買うときに、色々なパーツに別れていても必要なものはセットになっているか、その道のプロが買ってくれますから、買って来たけれど不足が出るということは、ないのです。でも、ブラジルでは、素人が買いにいくわけですから、足りない部品があったり、大きさが違ったりと色々な問題が生じます。
私も何度も 「あ〜、これと、これが足りない。」「この大きさではないものが必要。」と言われ、ムカッとしながら、取替えに行ったことか。。。。。。

ただし、ブラジルでは、きちんとした領収書を持っていけば、品物の交換には応じてくれます。ここは、日本よりいいですね。(日本は、建築で買ったものが、建主の都合でキャンセルのときは、基本的に建主の負担になりますから。)
返金は、ありませんが、ペンキを返却して照明器具に変えることも、タイルに変えることも出来ます。余ってしまうと、お金を返してくれませんから、電球を買ったりして調整しています。

さて、これから改装工事はどうなるのでしょうか?
セニョール バウデマーの悲しい顔が、続くことになるのでしょうか?

(つづく)

by  チロブラジル 2008年10月

 

 

 

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