男と女の断章 Seven True Stories   第六話  TOMIKOさん

アンティークの仕事でアメリカによく行っていた私は、アンティークショーで日本人の女の人に声をかけられました。 

――あなた、日本人?

――そうです。

――私もジュエリー持ってるんだけど。 

ここで言うジュエリーとは、いわゆる宝石ではなくて、ラインストーンなどを使ったイミテーションのアクセサリーのことです。


アメリカのアンティークショー 

こういう時、内心、ちょっと面倒くさいなと思ってしまうのです。

日本人だから、何となく買ってあげないと悪いような気がするし、予算は限られているのでそう沢山は、買えないし。 さらにお店でも持っているのなら、そこで見て好きなものを選べばそれでおしまいと言うことになるのですが、お店を持っていない人で、しかも日本人だと、家に行くことになったりして、買わないわけに行かなくなるのです。

こちらの希望に合ったものを最初から持っていれば、いいけれど、今回はあまりなくても「この次は希望のものを揃えておくから。どういうものがいいの?」などど、言われれば、この次から買わないわけには、いかなくなるのです。 

この時も、結局、次の日に家に見せてもらいに行くことになりました。 

そして、次の日

値段はあなたが付けて、と言われて買えそうな物を買えそうな値段で幾つか選び、お茶をご馳走になって帰りました。 

それから、買い付けに行くたびに、何となく会うことになり、Tomikoさんから少しずつアクセサリーを買っていたのでした。名前も「Tomiko」としか聞いておらず、どういう字を書くのでしょうか?年齢は、当時、50歳代半ばという感じでしたが、いつもセットしたての髪を明るい栗色に染めて、元気なおばさんという感じの女性でした。 

そして、10月のThanks Givingのころに訪ねたとき、「家に来ない?」と誘われて、遊びに行くと、ターキーの丸焼きを用意して、ご主人と息子さん、娘さんの4人で待っていてくれました。

日本人の作る料理は、美味しいですね。アメリカ人のお宅に泊めてもらっているので、ターキーの丸焼きもご馳走にはなっているのですが、アメリカの流行はダイエットと言うことらしく、胸肉を勧められることが多くて、パサパサとした食感があまり好きではなかったのです。Tomikoさんの作ったターキーは、しっとりとして、「アメリカ人は胸肉がおいしいって言うけど、私は、ももの方が好きよ。」と好みも私と同じ。しかも焼くときにお腹にスープを入れ込むらしく、胸肉の部分でもあまりパサパサしていないのです。 


イミテーションのアクセサリーも色々なデザインがあって楽しい。
 

ご主人は、物静かな小柄な人でしたが、「Tomikoの料理は、美味しいだろう」とにっこり笑って私に尋ねました。

さて、友人の婚約者(当時は、正式な婚約前でしたが)H子 が、私と一緒にアメリカを訪ねたときも、Tomikoさんから、アクセサリーを買うことになり、一緒に彼女の家を訪ねると、国際結婚の話になりました。

H子さんも、これから結婚するだろうアメリカ人の奥さんになった日本人女性ということで、聞きたいこともあったのでしょう。

――どこで、知り合いになられたのですか?

――進駐軍で日本に来ているときに会って、プロポーズされたのよ。

――ご家族の反対は、なかったのですか?

――最初はね。でも、何回かあっているうちに、家族も悪い人じゃなさそうねって言ってくれてね。

などなど。。。。 

Tomikoさんの実家は、高円寺の妙法寺の参道にあるお茶屋さんです。進駐軍と高円寺は、結びつかないのですが、そして、なぜ、知り合ったのかの詳細は、聞かなかったのですが、多分、Tomikoさんは、都心にお勤めをしていたのでしょう。そこで、ご主人と知り合って、結婚、渡米ということになったのでしょうね。

ご主人も白人の中流階級の出身で、アメリカ人としては、物静かな----ちょっと神経質な感じでしたが----、相手としても好ましい方でした。決して、お金持ちの暮らしではありません。2LDKの小さなお家に、ご主人との2人暮らし。そして、何よりも結婚して数十年、ご主人と2人のお子さんと楽しく暮らしているのをみれば、外国人との結婚のなかでも本当に成功例ということではないでしょうか。 

印象的なのは、Tomikoさんが、H子さんにした質問です。 

――相手の人は、どのくらい熱心なの? 私なんか、毎日ラブレターもらったけど、それでも初めは、信じなかったのよ。 

ちょっと誇らしげに、話したTomikoさん、今、結婚する人で「こんなに愛されて、結婚したのよ。」って誇れる人が、どれほどいるのでしょうか? 

――私も結婚しにアメリカに着いた時は、イミグレーションで色々と聞かれてね。今でも外国に旅行して、帰ってくれば、私だけ質問に時間がかかるのよ。
経済的にもそんなに裕福ってわけではないけれどね。
子供たちも独立したとはいえ、まだまだ、親に頼ってくるしね。
でも、この国で暮らすんだから、仕方ないのよね。
 

日本人同士の結婚にしろ、外国人との結婚にしろ、本当のBetter Halfにめぐり合うことが、どれほど難しいか、めぐり合うのを待っていてもダメなのです。めぐり合ってからの努力が必要なのです。自然に努力できる相手に会えた人は、ラッキーです。

でも、 「【アンラッキーだから、別れる】では、いつまで経っても幸せはつかめないのよ。」と、Tomikoさんは、教えてくれたようです。

by チロブラジル 2007年10月

 

 

 

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