男と女の断章 Seven True Stories   第一話 金髪 青い目

日本に住んでいた時、わたしの生活には「インターナショナル」という趣はまったくなく、日本に住む限り英語なんて自分には絶対必要ではないという強い確信を持っていた。ところが、人生とは奇なるもので、そんなわたしが、なぜか仕事を辞めてアメリカに語学留学することになった。

当時は、アメリカ語学留学花盛りで、どこのどんな田舎の学校にも確実に日本人がいるという情報を得ていたわたしは、日本人とつるんでは、絶対上達できないと思い、滞在先を学校に探してもらう時に「ルームメイトはアメリカ人にして欲しい」とお願いした甲斐あって、4人部屋のわたし以外の女の子は、みんな純粋な白人、金髪、青い目のアメリカ人の女の子達だった。

上にも書いたように、外人と全く無縁だったわたしだったから、この3人の女の子がわたしにとってのアメリカ人の女の子を理解するための「雛形」となった。

彼女達の名前は、ジョディ、リアンナ、ミシェル。3人が3人とも白人で金髪、青い目の持ち主で揃って19歳だった。これだけの情報だと、なんだか響きはいい。けれど、3人がそれぞれの個性を披露してくれた。

まず、ジョディ。彼女は、わたしが入った学生用の集合住宅の学生代表を務めていて、いかにも頭のよさそうな、そして、スポーツも万能そうな女の子だった。いかにも男の子にモテそうなタイプで、一緒に過ごした2ヶ月半の間に彼が3人くらい替わった。そして、昼間の変な時間に部屋に戻ると、共有のリビングであつ〜〜〜〜いラブシーンを演じているのだった。で、わたしが視界に入ると悪びれもせず「はぁ〜い」とか声をかけてきた。彼女の性格や行動は、わたしが勝手に想像していたアメリカの女の子とばっちりと一致して、感心するくらいだった。

次にリアンナ。彼女は、とっても人懐っこい子で、英語がほとんど話せないわたしにも興味を示して、ことあるごとにわたしの部屋に遊びに来ては、彼女の彼の写真を見せてくれたりした。同じ金髪、青い目でも、3人の中で彼女が一番輝くような容姿をしており、信心深く、ラップを嫌って、日曜日には賛美歌をきれいなソプラノで歌っているのが聞こえてきた。写真の中の彼氏は、「宗教の仕事で海外に行っている」と、それは寂しそうだったが、それ以上に彼のことを大好きなのがわかった。ジョディに比べると、一途な思いを持つアメリカ人の女の子もいるんだなぁと、ちょっと安心したものだ。

と思ったのも束の間、ある日のこと、彼女がかわいい男の子と一緒にいるところを見かけた。そして、彼女はうれしそうに「わたしのボーイフレンドのテッドよ」と紹介した。当然だが、彼女が見せてくれた写真のBFとは違う人物だ。つい先日まであんなに写真の彼を好きそうにしてたのに、分からないものだと少しがっかりしながら部屋に戻った。少しして帰って来た彼女に、つたない英語で「写真の彼はどうなったの?」と聞くと、「え〜、彼のことも大好きよ!そして、テッドのことも好きなの♪」と顔を赤らめて答える彼女。

この時、こんな純真そうな女の子でも二股?かけるのか。。。と残念に思う反面。そんな彼女がなんの罪の意識もなく普通に「二人とも好き」といって、その言葉に嘘がないところに何となく肯定させてしまう印象を感じた。この感覚は日本では感じ得ないものだった。そして、このことが「日本の常識とは果たして世界の常識か?」ということを考え始める契機となった。

最後にミシェル。この子は、アメリカで知り合った女の子の中で一番インパクトが強かった。まず、白人、金髪、青い目でも見目麗しくない人が存在するという、ちょっとしたショック。どんな感じかというと、映画で見た「ミザリー」の恐怖のおばさんちっくな雰囲気。つまり、表現は悪いけれど「デブ」で「強面」だった。 自称「チョコレートホーリック」と称する彼女が、部屋を出て行くときに手伝いに来たお姉さんも太っており、連れていた生後半年くらいの赤ちゃんも、想像を絶する巨大な赤ちゃんだったから、きっと、彼女の実家の食生活に問題があるんだろうと密かに思ったものだ。

彼女は、ルームメイトのジョディとリアンナが可愛らしく、男の子にちやほやされているのを常に羨ましく眺めていた。男の子の気を引こうとミニスカートを着たりして、むき出しになった醜い太股が哀愁さえ醸し出していた。

なんとか、どうにか男の子の気を引こうと、得意の料理で通りがかりの冴えない男の子にランチやケーキをご馳走したりしていたが、そうした男の子達は、食べるだけ食べるといそいそと自分の家に帰っていったのだった。それでも、彼女は、一瞬一秒でも異性と一緒に過ごせたことに満足そうだった。それにしても、誰彼構わず声をかけるために、テラスハウス形式で建てられたわたし達の建物の玄関 の前に座り込むのは止めて欲しかったが放っておいた。

ある日のこと、ジョディとリアンナが自宅に戻っていないのをいいことに、わたしが寝付いた後にビデオを餌に数人の男の子達をリビングに連れ込んでどんちゃん騒ぎを始めた。いつ終わるか、いつ終わるかとじっと耐えていたわたしだったが、夜中の2時を回ってもいっこうに静まる様子はない。もう、いい加減頭にきたわたしは、

 

「うるさい!!!!!いい加減にしろ!!!!!」

 

と、日本語で怒鳴った。すると、今までのうるささが嘘のように水を打ったように静かになり、男の子達はコソコソと帰って行った。それまでは、同情からミシェルにもニコニコ接していたが、次の日「今度あんなことがあったら、学校に報告してこの建物から出て行ってもらうからね!」となぜかちゃんと英語で怒り、その日以来、彼女が変な行動を取ろうとすると睨みつけるようになったわたしに、今まで、ふてぶてしい態度を取っていたミシェルも恐れをなして、少し普通の行動になった。

それにしても、外見というものが日本では比べ物にならないくらい女の価値を決めてしまうというアメリカの現実をまざまざと見せつけられ、「人間外見じゃない」なんて偽善者的な意識をアメリカでは捨てることにした。

by あっこちゃん 2007年9月

 

 

 

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